遺言書にはどのくらいの強制力がある?
遺言書とは、故人が自分の財産の処分を死後にどのように処理をするかを指示するための文書です。
財産や相続の関係については、基本的には遺言書に書かれた内容が優先されます。
遺言には様々な事項が書かれることがありますが、中でも法律で定められた
①財産に関すること
②相続権に関すること
③遺言の実現に関すること
については法律よりも優先されます。
そのため上記に関することは強制力が強いです。
ただし相続人全員が遺言書の内容と異なる相続内容に同意をすれば、遺言の内容を拒否することができるとされています。
一人でも遺言書と異なる内容の相続に異議を唱えた場合には遺言書を拒否することはできません。
また遺言書によって、遺留分(民法で定められてた法定相続人に最低限保証された遺産額)が侵害されている場合には、その相続人は遺留分減殺請求を行うことができます。
上記に関すること以外であれば、法的に効力を持たないことが多く、たとえ遺言通りに実行されなくても問題がないとされています。
有効な遺言書の条件は?
遺言書には、大きく自筆証書遺言、公正証書遺言があります。
公正証書遺言は、公証人に作成してもらうので、無効となる心配はほとんどなく有効な遺言となる可能性が高いです。
しかし自筆証書遺言は自身で作成するため有効な遺言書の条件を満たさず、無効となってしまうことも。
有効な遺言書の条件は下記のとおりです。
日付が書いてある
日付が書いていないと、遺言書は無効になります。
他に不備がなくても、日付がない時点で遺言の内容はすべて無効です。
全文自筆で書いてある
自筆証書遺言は、全文自筆で記入しなければなりません。
しかし財産目録の部分に関しては、パソコンで作ったり、通帳コピーなどの添付資料でも問題ないとされています。
財産目録の自筆で記載していないものには、必ず1枚1枚自筆での署名と押印が必要です。
自筆の氏名と押印がある。
自筆で署名をし、押印をします。
押印は実印でなく認印でも問題ありません。
最高裁判所の見解では、拇印・指印でもいいとされています。
遺言内容を拒否することはできる?
基本的に遺言書の内容は、一番に優先されます。
ただし法定相続人全員が、遺産分割協議にて遺言の内容と異なる相続内容に同意した場合には、遺言内容を拒否することができます。
ただし法的に効力がある項目は
①財産に関すること
②相続権に関すること
③遺言の実現に関すること
です。
たとえば「私の死後はみんな仲良く過ごすこと」「私の命日には毎年集まること」などの上記と関係のないことの場合には効力を持ちませんので拒否することができます。
後から遺言書に気付いた場合はどうする?
もし遺産相続などの手続きを終えた後に遺言書を見つけた場合にはどうしたらいいでしょうか?
実は遺言書には時効がなく、遺産分割を終えたからと言って無効にはなりません。
そのためもし遺言書が見つかった場合には、改めて遺言書の通りに遺産分割を行わなければなりません。
ただし相続人全員が同意した場合には、すでに完了したとおりの分配をそのまま有効とするのも認められます。
一度行った財産分配を再度行うのは相続人にとっても負担となるため、よっぽど大きく遺言と実際が異なる場合を除いては、そのまま有効とすることが多いです。
しかし相続人の中で一人でも同意をしない人がいれば改めて遺言に沿った財産分割を行う必要があります。
遺言書を見つけたら、すぐに家庭裁判所に提出をして検認を請求しなければなりません。
遺言書に封印されていた場合には、家庭裁判所の検認を受ける前に勝手に開封をしてはいけないので注意しましょう。
葬儀に関することが書いてあったらどうする?
遺言書に「こんな葬儀をしてほしい」または「自分の葬儀はしないでほしい」などと書かれている可能性もあります。
その場合には、どのくらいの強制力があるのでしょうか?
結論から申しますと、葬儀に関することには法的な効力がありません。
つまり極端な話、完全に無視をしても問題はありません。
ただし「祭祀の継承者の指定」という項目で、葬儀を行う人つまり喪主となる人を指定することができ、こちらは法的な効力を持ちます。
葬儀をどのように行うかまたは行わないかについては、強制力がありませんので故人の遺志を尊重するとしても、完全に書いてある通りにする必要はありません。
また遺言に書いてある故人の遺志を尊重するにせよ「遺体を自宅の庭に埋めてほしい」「大好きだった山に埋めておいてほしい」など法律に反することを行うと死体遺棄の罪に問われてしまうので注意しましょう。
葬儀後に気付いたらどうなる?
葬儀を行った後に遺言書の存在に気付き、そこに葬儀に関することが書いてあったというパターンもあるかもしれません。
その場合でも葬儀をやり直すことはできませんし、法的拘束力もないため仕方ないと割り切るしかないと言えます。
もし「どうしても故人の遺志通りの葬儀を行いたい」という場合には、お別れ会のような形であたらめて故人のやりたかった葬儀内容を行うということも可能です。

この記事を書いた人
亀井 洋一 (葬儀の口コミ編集部)
東京都出身。親の葬儀を経験したことで葬儀業界に興味をもち、大学を卒業後葬儀社で勤務。10年の現場経験を経て、退職。
消費者に有益な情報を届けたいという想いから、現在「葬儀の口コミ」を運営している。