廣済堂HDと公益社が合弁会社を設立

23区内の火葬場を運営する東京博善は、印刷事業を主業としていた廣済堂HDの100%子会社です。
そして、公益社は3つの葬儀社を子会社としてもつ燦HD株式会社の子会社の1つ。
首都圏、近畿圏で年間1万件以上の葬儀を執り行う大手葬儀社です。
2022年2月28日、廣済堂HDと燦HDが業務提携、新たに合弁会社「株式会社グランセレモ東京」を設立し、葬儀の施行を行うと発表されました。
火葬場を運営する企業と、葬儀社が提携をすることによって、火葬場に直接連絡をしても葬儀を行えるようになるのです。
葬儀業界内の懸念

今回の提携発表は葬儀業界、特に東京23区の葬儀社に激震もたらしました。
そしてこの提携に大きな懸念を持つ業界関係者も少なくありません。
「自社で葬儀を行う人に優先的に火葬枠をあてがうことができてしまわないか」という懸念です。
火葬場は公共性の高い事業であり、運営するには自治体の許可が必要です。
そのため他の地域ではほとんどの火葬場が自治体が運営する公営施設となっています。
しかし東京23区内にある7つの火葬場のうち6つは廣済堂HDの子会社東京博善が運営する民営施設。
公共性の高い火葬場施設と、いち葬儀社が提携を結んで火葬場自体が葬儀の施行も行うようになると自社で施行を行う人に有利になるように操作ができてしまう可能性もあると言われているのです。
消費者にとっては便利になる?

東京博善が運営する6つの火葬場は、駅チカで近代的なデザインなうえ、式場と火葬場が併設されていて大変便利です。
そのため近隣の方からの知名度も評判もよく「四ツ木斎場を使いたい」「代々幡斎場での葬儀を考えている」という方も少なくありません。
そんな時に葬儀社を自ら探すことなく、火葬場に直接連絡をすれば葬儀ができるので、さらに便利になります。
また提携先の公益社は大手葬儀社。実績が豊富で、高品質な葬儀ができるでしょう。
廣済堂HDと燦HDが今回提携、設立をする合弁会社グランセレモ東京は次のような4つのコンセプトを発表しています。
①ご遺族の”望む”葬儀を明瞭な費用で実現します。
②長年の経験から高いレベルで整備された研修制度をおき、高品質の葬儀を提供します。
③グリーフケアを含めて葬儀後もご遺族に寄り添います。
④多様な宗教、宗派、様々な規模の葬儀に対応します。
2022年7月以降、東京23区の葬儀事情がどう変化していくのか、注目が集まります。
葬儀社と廣済堂HDの関係の歴史

今回の提携により、東京23区の葬儀社の中には廣済堂HDへの不信感を強めたところもあるようです。
廣済堂HDは以前地元の葬儀社に「自社で葬儀施行は行わない」と言っていたとのことなのです。
ここで地元の葬儀社と廣済堂HDの歴史を振り返ってみましょう。
現在廣済堂の子会社である東京博善が運営する火葬場は、江戸時代に地域の寄り合いやお寺などで運営をしていました。
明治に入ると、元薩摩藩の商人だった木村荘平が旧東京博善株式会社を立ち上げ、その後東京都内の6か所の火葬場を運営することに。
大正に入って、現在の東京博善株式会社が発足し、旧東京博善株式会社から営業権をすべて譲渡されました。
当時は、周りの葬儀社やお寺が東京博善の株を少しずつ持っていたようです。
そこに1984年、出版やゴルフ場経営などを行ってきた廣済堂HDが一部の株式を保有し、経営支援を開始しました。
そして1994年、廣済堂HDは他の株主から株を買い占めて、東京博善株式会社を100%子会社化。
現在では廣済堂HDの利益の90%以上が東京博善株式会社によるものです。
その利益をさらに増益するべく、2021年1月から火葬料の値上げ、2022年4月からは東京博善の火葬場を使う際に必ず購入しなければならない骨壺の値上げと値上げが続き、地元の葬儀社からは困惑の声が広がっていました。
そこに今回の、公益社との業務提携と、地元葬儀社と廣済堂HDの溝はさらに深まってしまいそうです。
今後の動きに注目をしたいと思います。

この記事を書いた人
亀井 洋一 (葬儀の口コミ編集部)
東京都出身。親の葬儀を経験したことで葬儀業界に興味をもち、大学を卒業後葬儀社で勤務。10年の現場経験を経て、退職。
消費者に有益な情報を届けたいという想いから、現在「葬儀の口コミ」を運営している。