故人に供える花「供花」とは?

供花とは、葬儀で故人に供える花のことです。
「きょうか」または「くげ」と読みます。祭壇のまわりに名札のついた花飾りを見たことのある方も多いのではないでしょうか。
供花は親族や友人、同僚など生前に故人と親しかった人たちや遠方で葬儀に出席できない人から送られます。また香典の代わりに供花を送ることもあります。
供花を送る意味
供花には故人の霊を慰めるという意味と送る人のお悔やみの気持ちを表す意味があります。
また同時に花で祭壇や会場を飾る目的も持ち合わせます。
供花は祭壇から故人と関係が深い順に並べて飾ることが一般的です。
供花の手配方法

お悔やみの意を表す供花。故人との関係が深ければぜひ送りたいですよね。
しかし、供花を勝手に遺族のもとへ送りつけるのはマナー違反になります。
ここでは供花の手配、送り方の手順とマナーについて解説します。
基本の手配方法

供花の手配の手順です。
遺族の了承を得る葬儀社に連絡し、
故人の斎場名・喪家・葬儀日時・供花の種類を伝える故人の関係性・氏名を伝える
①遺族の了承を得る
供花を検討している場合は、まず遺族の了承を得ましょう。
故人の信仰している宗教や遺族が祭壇花のトーンを揃えたいと考えている場合など、供花をお断りされる場合も結構あります。
②葬儀社に連絡する
葬儀社には供花の種類があります。故人との関係性や予算から適切なものを選びましょう。
葬儀社は祭壇から会場の雰囲気・式のながれを把握しているため、祭壇とマッチした供花を用意してくれます。また供花を設置するタイミングもお任せできます。
③故人の関係性・氏名を伝える
供花につける札名に必要です。札名の書き方は後述で詳しく解説します。
法人で供花を送る場合
故人や遺族の勤め先など法人で供花を送る場合も、基本の手配方法と同様です。
法人などの場合は1つの供花を連名で送る場合があります。その際は札名の書き方が変わります。
こちらも後述の欄で詳しく解説します。
個人で供花を送る場合
葬儀社を介さず、故人で花屋から供花を手配するやり方もあります。
遺族の了承を得る葬儀社に連絡し、花屋から供花を出す旨を伝える花屋に故人の斎場名・喪家・葬儀日時・供花の種類を伝える故人の関係性・氏名を伝える
①遺族の了承を得る
まずは葬儀社に頼む時と同様、遺族の了承を取ります。
②葬儀社に連絡し、花屋から供花を出す旨を伝える
個人的に供花を出す場合も事前に葬儀社に連絡を入れましょう。その際に故人の宗教宗派、供花の種類を確認することも必要です。宗派や斎場のトーンにあったテイストを聞きましょう。
③花屋に故人の斎場名・喪家・葬儀日時・供花の種類を伝える
花屋にも必要事項を伝えます。
④故人の関係性・氏名を伝える
供花につける札名に必要です。札名の書き方は後述で詳しく解説します。
このように個人で供花を手配する方法もありますが、あまりお勧めしません。
葬儀社によっては提携している花屋以外の供花を受け付けない場合も多いからです。
また斎場の雰囲気を聞いたとしても全体の統一感を乱したり、宗派によって使える花を使っていなかったりする可能性があるからです。
個人で供花を送る場合は最新の注意を払って手配しましょう。
供花を送るタイミング
供花を送るタイミングで重要なポイントが2つあります。
訃報を知ってすぐに注文するお届けするのは通夜の日の午前中~3時間前ほど
まず訃報を知ったらすぐに供花を注文しましょう。
間違っても亡くなっていないのに供花の手配を始めてはいけません。
供花は通夜の3時間前までには会場に届くように手配しましょう。通夜の日、告別式の会場前に到着するようにすれば問題ありません。
万が一、告別式の時間までにも間に合いそうにない場合、無理やり送ることは避けましょう。
告別式後から四十九日までに遺族の自宅に花を送ることで、「後飾り」として仏前に飾ってもらうことができます。後飾りとは葬儀のあと一時的にお骨を置く祭壇のことです。その際は籠型のアレンジメントにして、祭壇に飾りやすいように配慮しましょう。
供花の単位
供花は1つ供える場合は「一基」、2つ合わせて供える場合は「一対」といいます。
これまで供花を送る場合は、一対を送ることがマナーとされてきましたが、近年は一基の方が一般的です。
供花の種類

一般的な仏式葬儀に使われるのは、菊をベースとした白・黄色・紫色が基調のスタンダードなタイプです。
葬儀によく用いられる菊は日本に古くから親しまれている花です。また天皇家の家紋にも菊が入っていることで、崇高なイメージや凛とした佇まいのイメージがあるため葬儀の場でも使われます。
また菊自体が日持ちするため、数日かかる葬儀の場にも適しています。
最近の供花の傾向
最近ではお坊さんを呼ばない自由葬なども増えたことから、白が基調の落ち着いた色合いだけでなく、故人が好きだった花を選ぶ人も増えています。
また葬儀社によっては供花でいただいた花を生花祭壇として使う場合もあります。これは会場の全体のトーンを統一できたり、喪主の費用負担を軽くすることになったりします。
供花の種類(宗教別)

供花の種類は故人が信仰する宗教・宗派によっても変わってきます。
ここでは日本で催されることの多い3つの宗教の供花について紹介します。
仏式

仏式葬儀に使われるのは、白・黄色・紫色の菊やカーネーション、ユリなどのアレンジメントです。小規模の斎場での葬儀なら籠盛(かごもり)にして飾るのが一般的です。
高級感を出したい場合には胡蝶蘭を入れることもあります。
神式

神式の供花の使用する花・組み合わせはほぼ仏式と同様です。
かつては榊をお供えすることが一般的でしたが、最近では喪主が榊、他の会葬者は花をお供えします。
キリスト式

キリスト教の葬儀でも花を送ることは一般的です。
しかし、教会などの葬儀場へ直接送るのではなく、故人の自宅へ送ります。その際はバスケットのような籠に入れるか、花束のような形にして送りましょう。
花のアレンジはユリや胡蝶蘭などを基本にし、白やピンクなどの明るい色が好まれます。送った花かごや花束は自宅から教会へ家族が運ぶため、コンパクトなものにしましょう。キリスト教の葬儀は生花が基本のため、造花やブリザーブドフラワーはNGです。
供花の価格相場
供花の平均的な相場は一基7500~30000円です。
一対で送るとその倍の値段がかかります。
どんなに故人と親しかったとしても、相場の間で供花を送りましょう。
相場を大きく上回る供花はかえって遺族に気を使わせてしまう可能性があります。
札名の書き方
供花には必ず札名を付けます。
札名を付けずに供花を出すことは、遺族が誰にお礼を言っていいのか分からず困ってしまうためマナー違反です。
供花の名前の書き方にはいくつかルールがあるため、紹介します。
会社から供花を送るとき

会社の同僚や代表など会社の関係者である場合、いくつか必要事項があります。
会社の正式名称支店名(あれば)役職(あれば)名前
札名にはどんなに長くても会社の正式名称を書くことがマナーとされています。
また同じ会社から連名で送る場合は、右から左に役職の高い順で名前を書きます。
役職などの地位が同列な場合は、特に順番を気にする必要はありません。
3人以上の連名で送る場合は、「所属部署名 一同」とまとめる方がすっきりします。
個人で供花を送るとき

個人で供花を送る場合はそのまま個人名を記載します。
友人同士の連名で送る場合、名前の順序の規則はありません。
ただし3名以上の連名になる場合は文字が小さく読みづらくなってしまうので、「友人一同」などまとめた方がよいでしょう。
親戚連名で供花を送るとき

親戚数名で供花を送るときは、右から左に年齢順に名前を書きます。
こちらも企業や個人の連名で出すときと同様に、3名以上であれば「子供一同」「孫一同」などとまとめた方が良いでしょう。
夫婦で供花を送るとき

夫婦連名で供花を送るときは、基本的にご主人の名前のみを書きます。
これは、「家として供花を送る」という考え方があるからです。
ご主人の名前だけでは誰からの供花かわからなくなってしまう場合、「〇〇太郎 花子」などと苗字を付けずに名前を並べる場合もあります。
苗字も合わせて連名にすると離婚・別居しているように見られるという慣習もあるため、注意が必要です。
札名を付けないことも
宗教・宗派によっては札名を付けないこともあります。
特にキリスト教の葬儀では、生花には札名をつけません。
しかし芳名板というかたちで、板状のものに送り主の名前を記載することもありますので、生花を出す場合には葬儀社に確認しましょう。
供花を送るときの注意点

ここまで供花の手配の仕方・種類について書いてきましたが、最後に供花を送るうえで注意したいポイントをお伝えします。
宛て先は遺族の名前を書く
供花の宛て先には喪主や受け取る遺族の名前を書くようにしましょう。宛名を故人にしてはいけません。
もし、遺族と面識がなく名前だけではわからない場合は、自分の名前とともに企業名や関係性を書いておくと親切です。
供花を断られたときは
遺族の意向や故人の遺志によっては、供花を断る場合も少なくありません。
案内状に「辞退します」との記載があったり、承諾を取る際に断られた場合は、供花を出すことをとりやめましょう。
最近では、家族葬などのこじんまりとした式が増えたことから、お返しを返す手間がかかることや会場の雰囲気を統一したいことを理由に断るケースが増えています。
【例文付き】供花をいただいたらお礼状を出す

遺族が会葬者から供花をいただいたら、お礼状を出します。
基本的には、四十九日開けに供花をいただいたことへのお礼状と「香典返し」を合わせて送ることが良いでしょう。
お礼状ははがき・手紙で送るのが無難です。
お礼状の送付までに時間がかかってしまう場合など、取り急ぎの連絡としてメールや電話を用いることは問題ありません。
しかし、メール・電話だけで済ませようと思っている方は、相手との関係性を考えたうえで失礼のないように対応する必要があります。
お礼状の例文

供花のお礼状の例文を添付します。
もしお礼状の文面に困っている場合は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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拝啓 このたびは 亡父 〇〇の葬儀に際しまして
お心のこもったご供花をいただき 誠にありがとうございます
いまごろは故人も花の香りにつつまれて 心安やかに旅立っていったことと思います
おかげさまで葬儀も滞りなく済ませることができました
遺族一同 深い感謝とともに厚くお礼申し上げます 敬白
令和○年〇〇月
東京都〇〇市〇〇丁目〇〇番〇〇
喪主 ○○○○
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お礼状にはいくつかマナーがあり、なかでも句読点を使わないことが一般的です。
句読点は文を区切り、文章を読みやすくするものです。
このことから葬儀が止まることなくスムーズに終えるように願う、相手に敬意を払う(補助なく文章が読める人だと認める)という意味があります。
お返しの品を出す
供花は香典ではないので、基本的にはお礼の品を送る必要はありません。
地域柄や関係性の都合でお礼の品を贈る際には、贈っていただいた供花の1/2から1/3程度の金額のものを選ぶと無難です。
贈る品物は香典返しと同様に、「消え物」と呼ばれるお菓子、タオル、洗剤などがオススメです。
会社などから複数人連名で供花をいただいた場合は、個包装のお菓子など皆が分け合えるものだと良いでしょう。
お返しののしは結び切りの水引を使い、表書きには「志」と記します。
のし下には喪主・喪家の姓のみを記載します。
まとめ
今回は供花の手配の仕方、供花を送るときの注意点について紹介しました。
様々なマナーはありますが、大切なのは故人と遺族を思うことです。
大切な方のご葬儀に供花を出すか検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を書いた人
亀井 洋一 (葬儀の口コミ編集部)
東京都出身。親の葬儀を経験したことで葬儀業界に興味をもち、大学を卒業後葬儀社で勤務。10年の現場経験を経て、退職。
消費者に有益な情報を届けたいという想いから、現在「葬儀の口コミ」を運営している。