亡くなる前に身体に起こる変化

死期が近い人の兆候のなかでも、分かりやすいものは身体の変化です。
特に目の変化は大きいです。目の力が弱くなったり、目が濁って焦点が合わなくなるということを聞いたことはないでしょうか。
また身体の変化は目以外の場所にも現れます。
体に起こる変化は実際に見たり手で触れたりすることでその違和感を感じ取りやすいです。
死期が近い人の代表的な症状は下記の6つです。
《死期が近い人の変化》
①食事や水分を取ることが少なくなる
②目に力がなくなる
③眠っている時間が多くなる
④意識が混濁する
⑤眠っている時間が多くなる
⑥意識が混濁する
⑦下顎(かがく)呼吸になる
⑧手足が冷えて変色する
一般的には下顎呼吸が始まると数時間で亡くなることが多いと言われています。
しかしこれらの症状が現れた場合でも、長時間続いたり回復することもあります。
不安な方は医師に相談してくださいね。
食事や水分を取ることが少なくなる
人は死が近づくと徐々に食べものや水分が取れなくなります。
容体が急変して食べられない場合を除いて、死を迎える人は体力がなくなり、食べる必要がなくなります。食事の量が減るのに伴って、体重も低下していきます。
このようなときに無理やりにご飯を与えても身体に吸収できる土台がないため、かえって苦痛をあたえてしまう可能性があります。
食事ができなくなってきたと思ったら医師に相談しましょう。
目に力がなくなる
死が近い人の特徴として、目の力が衰えるという症状があります。
食事や水分が取れなくなると、エネルギーがなくなります。すると顔の表情が暗くなり、目が落ちくぼんだり目に力を感じられなくなったりします。
さらに筋肉の衰えにより目を開けて眠ってしまうことも。
すると目が弱って見えたり、焦点が合わずにずっとぼんやりとして見えたりします。
眠っている時間が多くなる
亡くなる前の方は眠っている時間が長くなります。
これは脳機能の低下により、意識を保っていることが難しくなるからです。昼も夜も関係なく眠りにつきます。
眠っているときはそっと見守り、話しかけるときははっきりと伝えましょう。
意識が混濁する
脳機能の低下によって、幻覚や幻聴などが起きるせん妄という症状になることがあります。
さらに話しかけても触っても反応がない、話している途中で眠ってしまうなど意識がぼんやりした状態がずっとつづくこともあります。
下顎(かがく)呼吸になる
時間が経過し、亡くなることが近くなってくると、下顎(かがく)呼吸がはじまります。肺ではなく、顎を下げてがくがくと動かし空気を強く吸うような呼吸です。
明らかに通常の呼吸と違うために驚いてしまう方も多いでしょう。
しかしこの呼吸が見られると多くの場合、体内の二酸化炭素が増えるために意識はなく、苦しさは感じていないそうです。
ただし素人が安易に診断することは危険です。不安な場合は直ちに医師に連絡し、確認しましょう。
手足が冷えて変色する
さらに時間が経つと、手足が紫色になったり冷たくなったりします。
これは心臓の力や全体の循環機能が衰え、十分な役割を果たせなくなるからです。
このときには呼吸の変化・尿量が少なくなる・のどがゴロゴロとなる症状も合わせて生じていることが多いです。
亡くなる前に心に起こる変化

亡くなる前には身体の変化だけではなく、心の変化も見られます。
これから紹介するものの中には不思議な現象に見られるものもありますが、実は昔から世界各地で見られる現象でもあります。
内向きになる
亡くなる前の方は消極的になると言われています。
ふとしたきっかけで、ごはんが食べられなくなったり、趣味だった散歩に出かけられなくなったりという症状が見られます。
また新聞やテレビなど外のことに関心を示さず、家族からは自分の内にこもるように見えることがあります。
お迎え現象
この場にはいない人やもう逝去された人が当人の前に現れることを「お迎え現象」と呼びます。看護師さんや家族がお見舞いに来た時、「部屋に誰もいないのに、当人がだれかと話していた」という現象が起きることがあります。
なんとも不思議な体験ですが、2011年に看護師に対しての「お迎え現象を経験したか」というアンケートでは、回答中41.8%が「(お迎え現象)を経験した」という結果になり、一般的な現象であることが分かります。
中治り現象
中治り現象とは、死が近い人が一時的に急に元気になる状態のことです。
この現象は海外でも認められ、「ラストラリー(last rally)」と呼ばれているそうです。
中には全く食べ物が食べられなかった患者さんが突然「水を飲みたい」「アイスが食べたい」と訴えることも。
非常に不思議な事象ですが、はっきりとした原因はわかっていません。
死の基準
人が亡くなったかどうかを判断するのは「医師のみ」です。
医師でない人が人の死亡を判断することは法律違反になります。
人を亡くなったかどうかを判断するには3つの基準があります。
呼吸の停止脈拍の停止瞳孔拡大
上記の三つの基準がそろったとき、または医師の判断で満たしているとなったとき、
その人の死が決まります。
亡くなる前に家族ができること

これまで亡くなる前の人の兆候や死の基準についてお話してきました。
ここからは大切な人に亡くなる兆候が見えたとき、家族にできることを紹介していきます。
亡くなる前の方は意識もはっきりとせず、ものすごい眠気と不自由さの中にいます。
しっかりとやさしくメッセージを伝えましょう。
感謝の言葉を伝える
これまでの感謝の言葉を伝えましょう。
2021年のブリティッシュコロンビア大学(カナダ)の研究チームが行った実験によれば、「死の直前で意識がなくなった人でも音に反応する」ということが分かっています。
聴覚は〈瞼を開ける〉〈口を開く〉などの筋肉の運動を伴わなくても完結できる感覚だからだそうです。
そのため死の直前の人には、はっきりとわかるように声をかけてあげましょう。
聞こえている可能性は十分にあります。
汚れてしまった部分をきれいにする
亡くなる前は本人では身体を自由に動かせなかったり呼吸が正常にできなかったりします。
意図的ではなくても唾液が出てしまったり、涙やめやになどが出てしまったりします。
家族であれば、汚れてしまった部分を清潔に整えてあげましょう。
元気そうであれば汗を拭いてあげるなども有効です。
そばにいて見守る
すぐに眠ってしまう、会話ができないなどの状態であれば、そばにいて優しく見守ってあげましょう。
会話はできなくとも最期の時間を一緒に過ごしてあげることは、大切な人のためにも、残る家族にとっても貴重な時間になります。
亡くなる前にやってはいけないこと
これまで亡くなる前の兆候と家族ができることについて話してきました。
一方亡くなる前になってはいけないこともあります。
大切な人の死後のことや不満を言う
大切な人の前で死後のことを話したり、愚痴をいうことは避けましょう。
外から見ていると大切な人が眠っているように見えても、実は意識があることも…。
大切な人の前で葬儀や遺産分配の話、生前の愚痴を言うことは控えるべきです。
亡くなったら家族が行うこと

大切な人が亡くなると、深い悲しみに襲われることでしょう。しかし人が亡くなった後には適切な手続きを取らなければなりません。怠ったり忘れたりでは済まされない手続きもあります。
大切な人が亡くなったら、家族は何をすればいいのか説明します。
医師から死亡診断書を書いてもらう
病院や施設で亡くなった場合は、常駐の医師が死亡診断書を書いてくれます。
自宅で亡くなった場合は対応が分かれます。
主治医がいる場合は連絡して自宅に来てもらいましょう。医師に状況を確認してもらい、死亡診断書を発行してもらいます。
病気以外の事故や何らかの原因で亡くなった場合は、警察に連絡し検視を行います。
検視とは検察官が医師と立ち合い、身元や犯罪性の確認を行うことです。
検視でも死因がわからない場合は解剖を行い、事件性がないかを確認します。解剖には数日かかる可能性もあります。検視・解剖後の調書は「死体検案書」になります。
葬儀社を手配して葬儀の流れを決める
死亡診断書か死体検案書をもらったら葬儀社を手配します。
死亡診断書または死体検案書がないと葬儀を行うことはできません。
葬儀社は病院や警察から勧められることもありますが、提携している業者は高額なことが多いです。ネットで複数社検索し、見積もりやサービスを比較して最も気に入ったところに委託するのがいいでしょう。
病院等での安置は数時間~1日程度しかできません。
葬儀社は24時間連絡可能なところがほとんどなので、気に入ったところが見つかったら、遺体をすぐに引き取りに来てもらいましょう。
電話を掛けるときには、下記のことを考えておくとスムーズです。
・故人のお名前、生年月日
・問い合わせ者のお名前
・故人の住民票の市区町村
・どのような葬儀にしたいか(1日葬・火葬式など)
・遺体の安置場所は自宅または葬儀社の会館か
訃報を伝える
故人の死亡が分かったら、親族や会社・故人の友人たちに訃報を伝えましょう。
一般的に近親者への訃報は電話で伝えます。
職場の人や友人には、電話またはメールなどで伝えましょう。
お世話になっている菩提寺がある場合は、お寺にも連絡して葬儀の方針を聞きましょう。
家族の死を悲しむ
大切な人が亡くなった後、葬儀が終わるまで遺族はあわただしい日程を過ごすことになります。
葬儀を行うのは、「忙しさで遺族が悲しみを忘れるため」という言葉もありますが、悲しいときは一人で無理せずにちゃんと悲しみましょう。
葬儀をして「喪に服す」ことは、亡くなった人のことを思って泣く機会になります。遺された人にはこれからの生活を送るうえで必要な過程です。
悲しいときには周りや専門家を頼り、支えてもらいましょう。
大切な人の最期を慌てずに見送るために

今まで書いてきたとおり、大切な人が亡くなる直前直後は非常にばたばたします。
ここからは大切な人との最期の時間を慌てずに迎えられるように、前もって準備できることを紹介します。
伝えたいことは前もって伝えておこう
前述したとおり、亡くなる直前には脳機能が低下し、一日中ずっと眠っているかうつらうつらとしている状態が多くなります。
伝えたいことは意識があって会話ができるうちに伝えておきましょう。
葬儀について考えておこう
大切な人が亡くなる前に葬儀を考えるのは不謹慎だと考える方もいるかもしれません。
しかし、人が亡くなった後は搬送や手続きなどで非常にあわただしくなります。悲しみの中で、病院に勧められるがままに決めた葬儀社さんで非常に高額な料金を取られたケースもあります。
まだ余裕のあるうちに、大まかにでも葬儀のことを考えておくと、死後に困ることがありません。
万が一のときのお金や連絡先の確認をしておこう
前述したとおり、大切な人が亡くなった後は、意外とあわただしくなります。
葬儀のお金の捻出場所、訃報を伝える順番とその方法をリストアップするなど、大切な人の身の回りやその後のことを整理しておくことで落ち着いて最期の時間を迎えられます。
親族同士で、葬儀や訃報について考えておきましょう。
まとめ
今回は亡くなる前に人に現れる兆候と家族がそのときできることについてお話ししました。
もし家族に危ない状態の方や病院や施設に入っている方がいれば、参考にして下さいね。
悔いの残らない最期の時間が過ごせるように、今できることをやっていきましょう。

この記事を書いた人
亀井 洋一 (葬儀の口コミ編集部)
東京都出身。親の葬儀を経験したことで葬儀業界に興味をもち、大学を卒業後葬儀社で勤務。10年の現場経験を経て、退職。
消費者に有益な情報を届けたいという想いから、現在「葬儀の口コミ」を運営している。