佐藤さんが葬儀業界に入ったきっかけは何ですか?
実は特定の理由はないんです。 その昔、私は救急救命士を目指していて、生活を支えるためのアルバイトをしていました。とある日、たまたま見たアルバイト雑誌から葬儀社に応募したんです。本当に初めはただのバイトでした。
それがどのように変わったのですか?
当初私が目指していた救急救命士という仕事には、「人々の命を救う」という大きな役割がありました。しかし葬儀社で働く中で、人の一生を最後まで支えるという仕事にも深い意義を感じるようになりました。そこから、「人の役に立つ」という視野が広がったんです。
それは具体的にどのような経験だったのですか?
葬儀社で働く中で、私たちがどのように故人のご家族を支え、故人を尊重するかということを直に感じました。それは、救急救命士の仕事とは異なる形で、人の役に立つことができるという新たな視野が開けたんです。
なるほど、それは非常に興味深いですね。つまり、 最初は救急救命士を目指していたけれど、葬儀業界で働く中で人の一生を支える仕事の価値を見出し、それが葬儀業界で働くきっかけとなったのですね。 ちなみに今でも救急救命士への憧れはありますか。
はい、あります。元々は「人の役に立つ」ことを求めていたので。
まだ憧れは残っているのですね。佐藤さんの「人の役に立ちたい」という強い意志に感銘を受けました。
葬儀社にはどのくらい携わってきましたか。
23歳から始めて、今年で25年目になります。
なるほど。25年という長い期間、葬儀業界で働き続けているんですね。他の業界への転職は考えたことはないのでしょうか?
正直、一度も考えたことはありません。 他の業界に挑戦したり、社会情勢に対応して変化することができる人は素晴らしいと思います。しかし、私自身はそういった選択をしませんでした。 その理由は、私が仕事において「継続」が最も大切なスキルだと信じているからです。よく「適材適所」という言葉がありますが、最初からその「適材」になる人はいません。どの業種でもそうです。 どんな優秀な証券マンも最初は新人でミスを連発したでしょう。 どれだけ敏腕弁護士でも枕を濡らした夜もあったでしょう。 だからこそ、長く続けることで自身がその適材となる。そのまま継続することで最も価値ある人材になると私は考えています。
それはとても印象的な考え方ですね。つまり、どの業界でも「適材」になるためには、その仕事を深く理解し、経験を積み重ねる必要がある。そして、それが「継続」によってのみ可能であると。佐藤さんの25年という長きにわたる葬儀業界での経験は、まさにその考えを具現化したと言えますね。
印象に残る葬儀は何かありますか?
全ての葬儀は印象に残っていますが、特に心に残っているのは一家全員が亡くなった家庭の葬儀です。
それはどのような葬儀だったのでしょうか。
父親、母親、小学生の子供、そして幼稚園児の子供が一家で亡くなった家庭の葬儀でした。 その家庭の全員を一緒に見送り、一緒に火葬しました。葬儀の進行自体は他の葬儀と変わらないのです。しかし、一家全員を一度に見送るという経験は、他のどんな葬儀よりも私の心に深く刻まれています。 この一家の葬儀が特に印象深いのは、一家全員が一緒に生き、突然全てを失ったという事実。それは人生のはかなさと、私たちの仕事の重要性を改めて感じさせてくれました。 私たちの役割は、故人を送り出すだけでなく、生と死の間をつなぐ重要な橋渡しの役割も果たしています。この一家の葬儀は、その役割の重要性を痛感させてくれました。
その経験は著名人の葬儀や大規模な葬儀とは違った意味で心に深く残るものでしょうね。
佐藤さんの強みは何ですか。
それは遺族の希望がどうしても叶えられないときに「代案」を出すことです。代案を出そうと心がけています。
代案ですか。なぜそれが強みだと思うのでしょうか。
葬儀は故人への弔いの気持ちや遺族の希望で内容が決められます。 しかし、どんなに故人への弔いの気持ちや遺族の希望が強くても、葬儀の予算は有限です。もちろん予算が多ければ多いほど希望は実現しやすいです。とはいえ、すべての家庭が予算を確保できるわけではありません。そういった場合に、予算を押さえつつ、遺族の希望を可能な限り実現するための代案を常に考え、ご提案しています。 その意志や姿勢はどの葬儀社にも負けない強みだと考えています。
非常に大切なスキルですね。具体的な代案の一例を教えていただけますか?
もちろんです。 例えば、ある遺族が故人の愛犬との絆を葬儀で形にしたいと希望されました。しかし、その犬はすでに高齢。葬儀当日のストレスを考慮すると、直接会場に連れてくることは困難でした。そこで私は、遺族が持っている故人と愛犬の写真をスライドショーとして流すという代案を提案しました。これなら、故人の愛犬への想いを表現しつつ、実際の犬を場所に連れてくる必要もなく、さらには予算も抑えられます。
そのような考え方と提案力があるからこそ、佐藤さんは遺族から信頼されているのですね。ご自身の強みを活かし、これからも遺族の心に寄り添った提案を続けていただきたいと思います。