
早速ですがまず最初に、葬儀業界に入ったきっかけをお聞きしたいのですが、どのような経緯でこの業界に入られたのでしょうか?
実は、家業が曽祖父の代から葬儀屋をしていて、私はその家で育ちました。昭和の時代、葬儀業は「人の不幸でメシを食う」と言われて、結構忌み嫌われた職業だったんです。霊柩車とすれ違うと、親指を隠すように避けられることもありました。それでも、私はその中で「職業に貴賎は無い」と学んだような気がします。
それは当時、かなりの偏見を受けていたことが伝わりますね。では、ご自身がこの業界に入る決意はどのように固まったのでしょうか?
父が亡くなった後、専業主婦だった母が社長に就任しました。そのとき、やっぱりこれは手伝わないといけないなと思って、入社することに決めました。最初は、正直言うと、腰掛け程度に考えていたんです。でも、まさかここまで長く経営に携わるとは思ってもいませんでした。
実際に業界に入ってみて感じたギャップなどはありましたか?
葬儀式は宗教儀式なので宗教者の領分です。衛生的な処置や管理が一時代前の葬儀社には求められました。今は専門業者の領域になりつつありますが、故人の状態を葬儀まで最前に保つことが重要です。
とても重要な領域まで担われていたんですね。気をつけている事や心がけていることはありますか。
葬儀社にはご遺族との打ち合わせから宗教者との連携そして葬儀、荼毘、会葬者の流れ、人数の把握、収骨後の案内など膨大な労力が求められます。これを可能にするのはご遺族への労りの気持ちはもちろんのこと、日本の文化と宗教に関する知識と施行した経験量が必要です。いまだに勉強中ですが、改めて大変な責任の思い職業だと思っています。
では、社長としての経緯についてお聞きしたいのですが、入社当初から代表になるまでの道のりを教えていただけますか?
最初は、入社したときアルバイトの立場で、正直言って腰掛け程度の気持ちで仕事をしていました。家業として始めたわけですが、当時はあまり長く続けるつもりはなかったんです。でも、家業として業務に携わるうちに、どうしても母との相談が増えていきましたし、会社を支える責任も感じるようになってきました。
その時期に変化があったんですね。では、どのようにして正社員になり、昇進していったのでしょうか?
最初は本当に軽い気持ちでいたんですが、母と一緒に業務をこなしていく中で、だんだんと責任感が芽生えてきました。最初のころはもちろんアルバイトでしたが、仕事を続ける中で少しずつ正社員としての役割が増えていきました。その後は、社員からも信頼を得るようになり、業務の幅も広がっていきました。
信頼を得て、徐々に昇進していったのですね。その後、承継者としての自覚が育まれていったとのことですが、具体的にはどのような気持ちの変化があったのでしょうか?
母から経営のことを学ぶうちに、家業を守る責任があることに気づきました。社員とのやり取りが増え、承継者としての自覚も育っていきました。周りの社員からも信頼を得られたことで、だんだんと自分がこの会社を引っ張っていくべきだという気持ちが強くなっていきました。
その自覚を持つようになり、役員からの後押しもあって、代表に就任されたということですね。実際に代表取締役社長に就任した時の心境はどうでしたか?
最初は、責任の重さに圧倒されましたが、同時にやりがいも感じました。会社の創立50周年に合わせて就任というタイミングもあり、まさに自分の責任を果たすべき時だと思ったんです。そして、役員の後押しもあり、いよいよ代表としての役割を果たさなければならないという強い決意が固まりました。

新人時代のことで記憶に残っていることについてお聞きしたいのですが、何か印象的なエピソードはありますか?
新人時代は、主にお茶汲みやトイレ掃除、そして昼食用のお味噌汁作りなどが仕事の一部でした。当時は、昭和の女性の役割ということもあり、特に女性社員が担当することが多かったんです。それらの仕事は、新入社員にとっては当然の仕事でもありました。
確かに、女性だからという理由で役割分担があった時代ですね。その時、なぜ自分が女性だからお茶を入れなければならないのかと疑問に思ったことがあったとのことですが、どんな気持ちだったのでしょうか?
そうですね、当時は「女性だから何故人にお茶を入れなければならないのか?」と疑問に思ったこともありました。でも、後になって、その経験が良い学びだったと感じるようになりました。自分が下の立場だったからこそ、他の人の気持ちを理解できるようになったんだと思います。社長の娘を平等に扱ってくれたことにも感謝しています。今では、その経験が大きな財産だと思っています。
このお仕事をする上で最も重要だと思うスキルは何ですか?
遺族の気持ちに寄り添うこと。感情移入しがちですが業務として遂行するバランスも大事です。
たしかにバランスを取るのは容易ではないと感じます。この業界で働くことの最大の挑戦は何だと思いますか?
日本の葬儀文化が廃れていくと感じています。先祖の墓を処分して戒名をもらわず、お骨を樹木や海に流してしまう。その後に何が残るのでしょう。少子化やグローバル化で日本人の心も無くなる日が来るのではと恐れています。宗教者の領分でもありますが葬儀文化の継承の一役を担うことに挑戦しています。